【獣医師監修】猫の健康診断は必要ない?しないで大丈夫?

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猫 風邪【獣医師監修】

猫を病院に連れて行くのも大変だし、見た目に異常ないし、室内飼いだから病院に連れて行かなくてもいいかな?と思っている方が多いのではないでしょうか?

確かに猫ちゃんを病院に連れて行くのは大変ですし、室内飼いなら定期的にワクチンを注射する必要もないんじゃないか?元気だから病院に連れて行く必要がないんじゃないか?と私も思っていました。

ですが、8年間病院に連れて行ったことがない猫を、あることがきっかけでたまたま血液検査をしたところ、肝臓の数値にかなりの異常値が出てしまい「この異常がいつからなのか分からない」といった問題が起こり大変な苦労をしました。


そこで今回は動物のプロである「獣医師」の先生に「猫の健康診断の必要性」について詳しく聞いてみました。

今回お話してくださる先生をご紹介します。

タカハシ先生

・北里大学獣医学科
・埼玉、東京の病院に勤務
・現東京都内動物病院院長、臨床歴10年以上。

タカハシ先生
タカハシ先生

動物病院での治療とともに、保護活動を通しと多くの猫たちと関わってきました。

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猫の健康診断って必要?

時代とともに猫の飼い方は、徐々に変わりつつあり、以前は外で暮らしていた多くの猫たちが、家族の一員として家の中で暮らすことも増えてきました。

それに伴い健康意識が高まり、人と同じように猫に定期的な健康診断を受けさせることも多くなってきています。そこで、今回は猫で健康診断がなぜ必要なのかを解説します。

これを読んで猫の健康診断の大切さを知ってもらい、検査を受けに行ってみましょう。


健康診断の必要性

猫の平均死亡年齢は、1980年代はわずか3歳だったのが今では15歳を超えています。この寿命が延びた要因の一つが予防医療の発展です。

以前は防げなかった病気を防ぐことができるようになり、見つけられなかった病気を見つけられるようになりました。健康診断は、定期的にかかりつけの動物病院で、血液検査などの検査をすることで、その子の健康状態をチェックすることです。

健康診断をやる理由は、大きく分けて2つです。
一つは、病気の早期発見
そして、もう一つが健康なときの状態の記録のためです。


猫は病気を隠す生き物

猫は死期を察すると人前から姿を消すといわれるのをご存知ですか?これを聞くと、猫は死という概念を理解していて、死に場所を探すかのように思ってしまいますが、私はこの説は違うと思っています。

これは野生において弱っている状態を見せると他の動物にやられてしまうため、猫は本能的に隠れて逃れようとする習性があるからだと思います。

この習性は家で飼われている猫にも残っており、いくら体調が悪くても多くの猫がぎりぎりまで体調不良を隠します。

そのため、猫が体調不良を見せるときには、病気が進行してしまっていることが多いです。
健康診断のもっとも大切なことは、この猫が隠している病気を見つけて不調が現れる前に治してあげることです。

健康状態の記録のため

猫が調子を崩してしまい、病院で検査をし、異常が見つかったときに重要なのがその異常がいつからあったのかということです。

例えば、血液検査で複数の異常が見つかった場合、実は一つを除いて、以前からその異常があったのであれば、今治療すべきはその新しい異常ということになるかもしれません。

また、中には先天的な異常があっても見つかっておらず、それが高齢になって見つかった場合、先天的ではなく今まさに起こった異常ではないかと誤診してしまうかもしれません。

お腹の中に腫瘍を見つけた場合、それが数年間かけてじっくり大きくなったものでそれほど悪性度の高くないものか、急激に大きくなっているもので悪性度が強いものなのかの判断は一度見ただけではできません。

もちろん検査をすることでわかるかもしれませんが検査ができない場合もあり、判断に迷います。前者なら経過を見る時間があるかもしれませんが、後者ならすぐに手術に進まなければなりません。

この判断には、定期的な検査が必要です。健康診断を定期的に行うことでこのような診断に悩むことを防ぐことができ、治療がスムーズになります。


健康診断は何を調べるべき?

健康診断で調べるべき項目は、理想的には血液検査からレントゲン、超音波検査、尿検査などなど調べられれば多く調べることにこしたことはないと思います。

どこが病気になるかわからない以上多くの情報を持っておくと役に立つかもしれません。

けれど、全部一気に調べようと思うとその子への負担もありますし、費用も掛かります。そのため、適切な項目についてはその子の年齢や猫種、今までかかってきた病気などを踏まえてかかりつけの獣医師と相談するのがよいでしょう。

下記によく行なわれる健康診断の項目とその検査で見つかる病気について簡単に解説します。

血液検査

これは、一般的におこなわれる検査で、全血球検査という赤血球、白血球、血小板を調べる検査と血液化学検査という腎臓、肝臓、血糖値、たんぱく質、コレステロールなどの項目を調べる検査に分かれます。

全血球検査では、炎症や貧血の有無、血液化学検査では、それぞれの臓器の疾患や機能の障害などを調べることができます。広く病気を探すというイメージの検査ですが、この検査のみで病名にたどり着くことは難しいのでその他の検査も必要となることが多いです。

また、それぞれに基準値が設定されていますが、そこからずれている項目が必ずしも異常とは限らず、また、その基準値内でも異常ではないとは言い切れません。

それは、その子その子に個体の基準値というものがあり、実はもともと基準値からずれている場合があるからです。

定期的な健康診断で、数値の推移を追っていくことで異常を見つけられる場合もあります。

レントゲン検査

レントゲン検査は、人でも健康診断でよく用いられる検査項目で、主に心臓や肺の状態を把握する胸部レントゲン検査とお腹の中の状態を把握する腹部レントゲン検査に分けられます。

胸部レントゲン検査は、心臓の形や大きさから心臓病の有無や程度を肺の映り具合の変化から肺の疾患の有無や程度を把握します。

腹部レントゲン検査は、お腹の中にある肝臓や腎臓、腸管などの異常を把握するのに役立ちます。

また、レントゲン検査の得意なこととして、骨の状態の把握があります。猫が最近高いところに登らなくなったと感じたら、それは実は骨の関節に異常あり、それがレントゲン検査で見つかるかもしれません。

さらに、猫に多い腎臓や膀胱の結石を見つけるのも得意です。レントゲン検査を定期的に行うことで症状が出る前に異常を見つけてあげましょう

超音波検査

超音波検査は、心臓の異常を検査する心エコー検査とお腹の中の臓器の異常を検査する腹部エコー検査に分けられます。

心臓のエコー検査では、心臓の中の弁の形や動き、心臓の中の部屋を分ける壁の厚さや部屋の広さなどを調べることができます。猫では心筋症という心臓の病気が多く、それを見つけるためには心臓の超音波検査が必須です。腹部超音波検査は、細かく各臓器の異常を細かく把握することができる検査です。特に腫瘍などの発生は、初期の頃は血液検査にもレントゲンにも異常が出ないことがほとんどで超音波検査でしか見つけることができません。そのため、この検査を定期的に行うことで、気づいたときには遅かったという悲しい出来事を減らすことができるかもしれません。

その他検査

上記はよく行うスタンダードな検査です。けれど、その他にも尿検査、血圧測定、甲状腺ホルモン検査など様々な検査がありますので、その子の年齢や猫種などに応じて起こりやすい疾患がことなりますので、かかりつけの獣医師と相談のうえ適切な検査を選んでもらいましょう。

健康診断で見つけたい病気

猫の定期的な健康診断で、特に気をつけたい病気についてあげてみます。

慢性腎臓病

猫の慢性腎臓病は、すべての猫の50%、15歳以上の子の80%程度がかかると言われる病気です。

慢性腎臓病は、多くの場合緩やかに進行し、腎臓の機能の半分程度が失われて初めて症状が現れます。初期の症状は、飲水量の増加や尿量の増加で、なかなか気づくことが難しく、より悪化していくと食欲元気が失われ、最終的には命を奪う病気です。

この腎臓病の恐い所は、基本的には失われた腎臓の機能は元に戻すことができない点です。腎臓病の治療の多くは、病気の進行速度を緩やかにすることと、起きている症状を緩和することが中心です。そのため、早期診断がとても大切になります。

最近では腎機能の約4割が失われたときに上がるSDMAなど血液検査の項目も多くの病院で測ることができるようになっており、以前より見つかりやすくなっています。

定期的に検査することで、腎臓の衰えを早く見つけ、食事療法などの緩和治療に進むことで、より長く腎機能を保つことができ長寿に繋げることができます。

甲状腺機能亢進症

甲状腺とは、首の気管の横についている臓器で、主に身体の新陳代謝に関わるホルモンを分泌しています。

高齢の猫では、この甲状腺から代謝をあげるホルモンが過剰に分泌されてしまう甲状腺機能亢進症という病気が多く見られます。

甲状腺機能亢進症の恐い所は、一見して病気になっているように見えないところです。なぜなら、甲状腺機能亢進症の猫の多くに多食と活動亢進の症状がみられます。

つまり、高齢の猫がよく食べてよく動いてくれているから、ご家族としては元気だと勘違いしてしまいます。でも、これは、本来のその子の食欲ではなく、ホルモンの異常によって代謝が亢進しすぎてしまい、エネルギーが足らないため食べているので、食べ過ぎから嘔吐したりしますし、それでもカロリーが足りず痩せていきます。

甲状腺機能亢進症は、T4やFT4という甲状腺ホルモンの量を血液検査で調べることで診断することができます。

甲状腺機能亢進症の治療は、根本的には外科的に甲状腺摘出することですが、多くの場合内科的に薬の投与もしくは食事療法を続けることで症状を緩和することができます。

腫瘍

猫たちも寿命が延びるにつれて、死因として高くなっているのが癌です。

猫も人と同様に身体のあらゆる部位に癌ができ、その命を奪っていきます。腫瘍、特に身体の内側にできる腫瘍はご家族が見つけることは難しく、その多くは大きくなってその臓器の機能を害してから見つかります。

そして、見つかった時には、治療が困難なケースも非常に多いです。そのため、高齢になってきたら定期的な健康診断の際に、レントゲンや超音波検査等の画像検査も一緒におこないましょう。

早期発見された腫瘍は、早期に治療を開始することで治すことができるかもしれません。

健康診断の費用はどれくらいかかる?

健康診断の費用は、病院、その子の年齢、猫種などにもよっても異なります。

『家庭飼育動物の診察料金実態調査及び飼育者意識調査』における健康診断の費用は、最も多いのが10,000~12,500円程度であり、中央値は14,021円となっています。

このデータは平成27年度のもので、今は当時よりも獣医療の発展に伴い調べられる内容も増えているため幾分高いかもしれません。

ですが、最近では多くの病院で積極的に健康診断を勧めており、時期や内容によっては、通常よりも費用を抑えてくれているところもあるので、探してみるといいかもしれません。


健康診断の頻度はどれくらいが適切?

健康診断の頻度は、一般的に進められているのが6歳、7歳までは年に一回、それ以降は年に2回とされています。

そんなにやるべきなのかと思う人もいるかもしれませんが、人と猫では歳のとり方が異なります。猫の1歳は人でいう18~20歳にあたり、6歳は大体人の40歳にあたります。

そして、1年につき人でいう4歳くらい年をとります。そのため、例えば、半年に一回調べても中高年の人が2年ごとに健康診断を受けるくらいの頻度に相当します。

そう思うと会社勤めの人が年に一回の健康診断を義務付けられていることを踏まえると、それほどおかしくないかなと思います。


健康診断とワクチン接種は同時にできるのか?

猫の混合ワクチン接種も年に一回打つことが多く、それに合わせて健康診断を受けるかたもいます。それは、定期的な健康診断を忘れずに実施する一つの手としてはいいかと思います。

でも、健康診断の検査をストレスに感じ、その後体調を崩してしまう子もなかにはいます。そのときにワクチンも同時に実施していると、ストレスで体調を崩したのかワクチンの副反応で体調を崩したのかわからなくなるかもしれないので、可能であれば別日の方がいいかもしれません。



おわりに

大切な猫に長く元気に一緒にいてもらうには、健康診断がかかせません。

また、健康診断は普段あまり動物病院にいかない猫を動物病院に連れていく一つのきっかけになります。年に一回でも動物病院に通うことで、そこの獣医師とコミュニケーションをとり、信頼関係を築いていきましょう。

そうすることで、いざという時もスムーズに検査、治療に入ることができると思います。ぜひ定期的な健康診断を行い、元気に長寿を目指しましょう。

また、飼い猫に関して悩みがある方は、「同じ悩みを抱えている」「同じことを経験した」など、飼い主同士で情報交換が出来るサイト【DOQAT】があります。

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参考

・家庭動物(犬 猫)の高齢化対策 著 須田沖夫
・「令和2年(2020年)全国犬猫飼育実態調査 結果」一般社団法人ペットフード協会
・家庭飼育動物の診察料金実態調査及び飼育者意識調査 公益社団法人 日本獣医師会

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